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ただメタボ対策のためでなく-自転車で銭湯めぐり
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「ツール・ド・銭湯2009」第26ステージは8月21日(金)。この日は番台銭湯に行きたい気分だったので中野区の「月の湯」を選んだ。

月の湯は方南通りと中野通りが交わる南台交差点の近くにある。最寄駅は東京メトロ丸ノ内線の中野富士見町駅あるいは京王線の幡ヶ谷駅で、いずれも距離は約1.2km、徒歩13~14分と思われる。

月の湯の周辺は住宅地と商店街。中野通り沿いには5階建て以上のマンションが目立つが、路地を一本入れば2階建てのアパートも多い。南台三丁目付近は昔ながらの商店街が広がり、人出も多い。この週末には近くの神社の納涼盆踊りが催されるとのことで、賑わいもいっそうだ。

月の湯


月の湯の建物は二段式屋根の木造。入口部分は赤茶色のタイルで門のようになっている。上には金色の「月乃湯」の文字。入口の隣は左右ともコインランドリーとなっている。

牛乳石鹸の暖簾


入口の暖簾は牛乳石鹸のもので富士山に波、湧き立つ雲のデザイン。男湯は右側。木製下足板の下足箱に靴を入れ、引き戸を開けると番台にはおかみさんが座っている。番台の先はもちろん脱衣所だが、脱衣所に入るところの間口が壁で絞られていて、そこにまた暖簾がかかっている。そのため番台からは脱衣所が直接見えない。感覚的にはフロントにかなり近いので、番台が苦手な人でも大丈夫だろう。

脱衣所は一般的な広さで、アナログ体重計、ドライヤー×1、ソファーとテーブル、ソフトドリンクの自販機が置かれている。

ロッカーはアルミ板が鍵の松竹錠。すべて3:4型で数は浴室対面に7列×4段、外壁側にも7列×4段、中央部やや外壁寄りに6列×2段×2面の島ロッカーの計80箱。壁沿いのロッカーの上には常連客の洗面器などがたくさん乗せられている。先客は7~8名だったが、最下段の箱を中心に全体の3分の1ほどがなぜか施錠された状態になっていた。

右側の看板


浴室内は広々としている。天井が高く、陽の光がたっぷりと射し込んでいる。男女境壁は鯉のタイル画。カラン周りや床のタイルも古いものだ。カラン配置は男女境壁側より6+(8+8)+7。男女境壁の6か所以外はシャワーヘッド付きだ。島カランと両壁との間隔はとても広い。

外壁側にはシャワーブースが2つあり、男女境壁側にはサウナ室がある。サウナ室は1畳ほどの大きさしかなく、2人入れば満員になってしまう。しかも、お世辞にも立派な造りとは言い難い。だが追加料金は無料である。嬉しいサービスと言えるだろう。

月の湯には水風呂がない。たぶんその代わりなのだろう、男女境壁に水のみが出るハンドシャワーが1つある。

左側の看板


桶は黄色ケロリンと色、形状は同じだが印刷されている文字は「月の湯」である。椅子は家庭用に市販されているものの他に「п」型のものが積み重ねられていた。

カランの湯が熱めなので適当に水を混ぜて湯かけをする。浴槽の壁には富士山のペンキ画。早川氏のサインがあり、「20.8.18 富士川」と書かれている。

浴槽は2つ。向かって左が深湯。底から泡が緩やかに立ちのぼっている。隣は円筒の周囲から水流が噴き出すマッサージ湯と座風呂となっているが、深湯との間は縁の高さに木の棒が1本渡されているだけで、その下はつながっている。湯温計は46°Cだが、入ってみると「ちょっと熱めかな」という程度。43°C前後だろう。

完全に仕切られている右側の浴槽はバイブラ薬湯。湯は黄緑色をしていて、典型的な入浴剤の匂いがする。壁には「イヴタス ヒアルロン酸」というプレートが貼り付けられている。「イヴタス」は調べたところ伊吹正化学工業株式会社という滋賀県の入浴剤メーカーの商標であった。

湯温計は42°Cを指していたが、隣の深湯と比べて2~3°C低い程度。実際の湯温は40°Cぐらいではないかと思う。

さて、それぞれの浴槽の大きさだが、深湯はゆったり入れるのは2人まで。譲り合って3人、マッサージ湯と座風呂は構造上各1人、薬湯は足を伸ばして入れるのは2人、頑張って3人、とカラン数のわりには少々狭い気がするが、常連さんに長湯の人はほとんどおらず、待ったり待たせたりということはなかった。

建物の右側は駐停車・駐輪禁止


月の湯には駐車場はない。また建物の右は私道で、駐車・駐輪禁止となっている。建物の入口には自動販売機が置かれ、すでに書いたように両サイドはコインランドリーとなっているため、駐輪スペースはほとんどない。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

月の湯には駐車場がない、そして駐輪スペースもほとんどない。だが常連さんにとってそれは問題にならないようだ。彼らは次々と徒歩で現れ、暖簾をくぐっていった。

基本的に、あくまで基本的に、銭湯は徒歩で通うところなのだ。それが近くの駐車場を借りてまで客に提供する銭湯が珍しくないのには次のような背景があると推察する。

昭和50年ごろまでは銭湯の数も多かったから、今回の南台のようにその当時にはすでに多くの住宅があった街では、ほとんどの人にとって徒歩圏内に銭湯があったものと思われる。また銭湯側としても、徒歩圏内の客だけを相手にしていてもやっていける時代だった。

しかしその後、家風呂があたりまえになって客が減少。銭湯側はこれに少しでも歯止めをかける必要が出てきた。サウナやジェット、バイブラなど普通の家庭にはない装置を設置したり、駐車場を確保することで「クルマで来たい」という客のニーズに応え、遠方からの来客を増やそうとした、というわけだ。

「クルマで銭湯」はこうした流れの末に行き着いた現代の銭湯通いのスタイルであり、また客のニーズと浴場主のサービスがかみ合った結果である点から、わたしはこれを否定はしない。しかし、このスタイルはいささか情緒に欠ける気がするのだ。


月の湯 (中野31番)
東京都中野区南台2-30-7
03-3381-8786
営業時間 15:00~24:00
定休日 月曜(祝日は翌日休)


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